自閉症スペクトラム(ASD)と子どもたち

自閉症スペクトラム(ASD)と子どもたち

■「自閉症スペクトラム(ASD)」は「自閉症」とどう違う?

以前は、『自閉症』はめったに見られない、珍しい病気と思われていました。しかし、近年、古典的な自閉症(カナー型)とまでは行かなくても、社会性やコミュニケーションに困難のあるさまざまな症状のある人たちがたくさんいることがわかってきました。たとえば特定不能の広汎性発達障害やアスペルガー症候群などがあることがわかってきました。そこで、自閉症を頂点として、社会性やコミュニケーションに困難のあるさまざまな発達障害を総称して『自閉症スペクトラム』と新しい診断基準(DSM-5)では呼ぶようになってきています。スペクトラムとはプリズムのことです。プリズムには境界がはっきりしない虹色の色がありますね。そのように、幅広いさまざまな程度の症状がある、という意味です。

 

■ 自閉症スペクトラム(ASD)の原因

1950年代くらいまでは、母親の子どもへの接し方が原因(冷蔵庫マザー)と言われていましたが、60年代から70年代にかけて、日本の1歳半検診の結果などから、生まれつきコミュニケーションがうまくとれない子どもが数多くいることが分かってきました。その後80年代くらいからは医学的に対応が可能な疾患と認識され、さまざまな取り組みが行われています。しかし、原因についてはまだよくわかっていません。

一時期、予防接種の防腐剤として添加されていた水銀が原因ではないか、と報告されたこともありますが、現在ではこの説は否定されています。

最近の研究では、ASDの子どもは脳の働きが健常児と異なることが分かってきました。左脳の、言語をつかさどる部分などが適切に働いていないのです。つまり、生まれつき脳機能障害を持っている、ということです。ASDの発症には性差があり、男児の方が多いのですが、これはもともと女性の方が男性よりもコミュニケーション能力が高いからです。

 

■自閉症スペクトラム(ASD)の人が増えてきている!?

海外の調査では、180人に一人といった数から最近では100人に一人ぐらいいるのではないかと言われています。我が国では、自閉症スペクトラム障害、注意欠陥多動性障害、学習障害を「発達障害」として、2005年の発達障害支援法が施行されてから、社会と学校において支援への動きが活発化されています。2012年の文部科学省の調査では、全国の小中学生の6.5%ほどが発達障害とされています。『文章の要点を読み取れない』『簡単な計算ができない』などの学習障害(LD)は4.5%、『授業中に歩き回る』などの注意欠陥・多動性症候群(ADHD)は3.1%、知的発達の遅れを伴わない自閉症スペクトラム障害(高機能自閉症)は1.1%でした。しかし、成長と共に症状が改善される人も多く、最も頻度が高かったのは小学校1年生で9.8%でしたが、年齢と共に下がって中学3年生では3.2%でした。

 

■学校現場での自閉症スペクトラム(ASD)への対応

学校側の理解があれば、支援学級なども含めて対人関係でストレスを軽減できるような工夫がなされることもありますが、さきほどの文科省の調査では、ASDを持つ児童・生徒の38.6%は個別指導などの支援を受けておらず、『支援が必要』とされているのに支援を受けていない児童・生徒が6%もいます。

適切な支援を受けずに放置されていると、その後うつ病、不安障害、過食症、チック、強迫障害、自傷などの2次障害が現れ社会生活上大きな障害になります。

 

■社会としてできること

子どもに占めるASDの率は同じくらいですが、アメリカは我が国の二倍の人口があります。ところが専門家の数が圧倒的に違います。日本の子どものこころの問題に対応する医師の数は精神科で400人、小児科で3000人ぐらいしかいません。アメリカでは10倍以上(数万人)いますし、医師以外の専門家も10倍ぐらいいるといわれています。子どもの精神神経発達の診断や治療、支援を行える専門病院も専門医も、日本では非常に少ないのです。そのような医療態勢を早急に拡充させる必要があります。さらに、ASDの子どもたちが大人になって自立するための受け皿作りもこれからの緊急の課題です。昔は、人とのコミュニケ

ーションが上手ではなくても、複雑な文字や文章が書けなくても、立派に自立できるたくさんの仕事がありました。今そのような仕事がどんどん少なくなっています。そのような仕事を復活させる努力を社会全体が行っていく必要があります。

そうしてこうした子供達がもつ独特の才能をポジティブに考えていく立場(ギフテッド)が重要だと思っています。つまり障害(ネガティブ)として捉えるのではなく、「神様からの贈り物(ギフテッド)」を持つ人と考えていこうという立場です。このような子供たちの独特の才能を活かしながら、就労支援をするための組織を作って行くことが求められており、私たちオーク発達アカデミーでもそうした環境を作る準備を整えています。「社会がASDの子どもたちを助けるのではなく、ASDの子どもたちが社会のために役立つような社会づくりが夢」と、宮尾先生も語っています。

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