女性に多い、「隠れ発達障害」はなぜ起こる?

「女の子の診断はなぜ難しいのか」

医療法人社団 益友会 どんぐり発達クリニック理事長
医学博士 宮尾益知


もくじ
1.発達障害の基準は男性
2.自閉症スペクトラム障害の症状
3.自閉症スペクトラム障害の男児と女児の差異
4.ADHDの男児と女児の差異
5.小学校高学年以降、ADHDの症状が目立ってくる

 

1.発達障害の基準は男性

発達障害は神経発達の障害でありスペクトラムです。けっして精神障害ではありません。スペクトラムとは、「連続体」という意味です。虹のように、自閉症の症状や個性には、グラデーションがあります。それゆえ、診断基準は、一番特徴がはっきりと出ている状態、つまり社会生活が困難な状態を想定して策定されています。

また、現在の発達障害の診断基準は、男性を想定して作られていると思われます。困難を生じる社会性、行動、学習面では、男性脳が不得意なところが多く、目立ちやすいからです。なかなか発達障害だとはっきりせず、診断が遅延する理由は、症状として捉えにくいことがあげられるのです。

 

2.自閉症スペクトラム障害の症状

診断基準の観点から考えてみると、自閉症スペクトラム障害では、「ウイングの三つ組」の症状が基盤になって、診断基準が作られています。

「ウイングの三つ組」とは、①対人交渉の質的な問題 ②コミュニケーションの質的問題③イマジネーション障害からなる、自閉症スペクトラムの3つの特徴のことです。

ウイングの三つ組

一括りに自閉症といっても、一人ひとりの発達の様子には個人差があるように見えることも多いですが、ほとんどはこの「ウイングの三つ組」に集約できる、ということがわかっています。

DSM-5(アメリカの精神科医用の診断基準マニュアルの第5版)では、これに加え、「こだわり」、「感覚過敏の重要性」が加わわりましたが、いまだに認識は乏しいままです。

自閉症の特徴を具体的なシチュエーションで見ていくと、以下のようなものがあります。

自閉症の特徴(例)
・自分と相手との関係を正しく理解できずに不適切な行動をとってしまう。
・言葉の獲得に偏りや奇妙さがある
・人見知りがない
・臨機応変に対応する力が不足している
・不測の事態が起きるとパニックになってしまう
・そのため、パニックを避けて“同じ状態であること”に強く固執する
・乳・幼児期には反応が乏しいか、過敏かどちらか
・母への後追いが乏しい
・指さしが、興味の指さしから始まる
・共同注意(他人が見ているものと同じものに注意を向けること)が見られない

 

3.自閉症スペクトラム障害の男児と女児の差異

知的に明らかな遅れがなく、発語の遅れもない(ただし、内容は固有名詞であることが多い)場合、特徴的行動が見られない限り、見過ごされてしまう傾向があります。

特徴的な行動の例としては、遊び方や日常生活に特徴が出るなどがあります。例えば、物を一列に並べることに没頭したり、 電車やマーク、文字、数字、特定のキャラクターなどに強く関心が偏ったり、過去や未来のどの日付を言われても曜日を即答できるなどです。しかし、こうした行動は、多くの場合、男児に限られます。

女児はというと、「一人ままごと」をしたりするので、「ごっこ遊び」ができているかのごとく理解されてしまい、特徴的な遊び方が理解されにくいのです。

女児の場合は、幼児期後期になってようやく、以下のような事象がみられるようになります。

女児の自閉症の特徴(例)
・学童期になって友達ができず、一人でいることが多い
・友達に不適切な方法で近寄ってしまう
・ぼんやりと自分の世界に浸っていることが多い
・何気ない会話ができないために、ガールズトークに参加できない

女児の自閉症スペクトラム

このような事からからかわれたり、いじめられたりし、登校拒否状態となって周囲が気が付く…というケースが多いのです。聴覚過敏、嗅覚過敏のため集団に入れないこともあるほか、理由を説明することが難しいことも多くあります。

 

4.ADHDの男児と女児の差異

ADHDの主な診断基準は、以下の2点です。

  • 不注意
  • 多動・衝動性が12歳以前に出現する

「不注意」とは、注意の持続困難・転動、問いかけの無視、順序立てた活動が困難であったり、なくしもの、毎日の活動を忘れるなどです。

「多動性、衝動性」とは、そわそわもじもじ、離席、行動過多、じっとしていない、喋りすぎ、質問をよく聞かないで答える、順番を待てない、会話やゲームを妨害などです。

女児の場合の「不注意」の特徴は、(特に集団において)問いかけの無視、なくしもの、そわそわもじもじ、しゃべりすぎ、片づけられないなどが特徴です。一方、女子の「多動性、衝動性」の特徴は、椅子に落ち着いて座っていない、しゃべりすぎ程度にとどまります。その他の特徴である、問いかけや授業を聞いていない、なくしもの、片づけられない、なども、低学年では親が手伝ってあげることが多く、特徴としてあまり目立たなくなっています。

 

5.小学校高学年以降、ADHDの症状が目立ってくる

小学校高学年からは、親が手伝わないことも多くなり、女児でもADHDの症状として目立ってくるようになります。具体的な症状としては、自分流でしゃべりすぎる、人のいうことを聞いていない、約束をすっぽかす、また、そういう事象が重なって、友達関係がうまくいかなくなる、などがあります。

学校でのトラブルが続くようになるこのころ、病院へ受診する人が増えてきます。

具体的な症状は、忘れ物、なくしもの、片付け、仕事上の失敗が続く、自己中といわれ、いつもひとりぼっちであることに気づいた…等があります。

一方、こうした症状がありながら、認知度が低いため、成人期まで気づかれないことが多いのも現状です。

女性のADHDの具体的な特徴としては、以下のようなものがあげられます。自分自身はもちろん、周囲にこうした症状で困っている人はいないでしょうか。

女性のADHDの特徴
・物事を計画して実行遂行する遂行機能の障害
・過去と現在の情報の保持と、関係するワーキングメモリー(記憶や情報を一時的に記録して、その間に何らかの作業を行うための記録のこと)の障害により、話が長く要約できない
・人の話に割り込む
・電話番号が覚えられない
・思い立ったら行動に移さないと気が済まない
・切り替えが悪い
・時間感覚の障害のため、約束に遅れる
・段取りの悪さから、片づけられない
・立体知覚の障害から、道を間違える

 

成人女性患者の場合、子供時代の話を聞いていくうちに、過去に母から受けた叱責や、自分ができなかったことを思い出し、泣き出すことも少なくありません。病院に行くのは気が引ける、怖い、というイメージを持っていている人も多いですが、上記の項目に心当たりがある人はぜひ一度、病院に足を運んでみてほしいと思います。

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